と、ある瀟洒な住宅。玄関に足を踏み入れるとそのお宅の歴史のにおいを感じる。応接間に通され、はてピアノはどこかいな?あっ!ありました。こじんまりと。応接セットの陰に隠れてしまいそう・・・。木目の小さなピアノ・・・。
「もう、70年くらいたっていると思うんですけど、主人はすててしまえ!っていうんですけど・・・」と、ご年配ではあるがそこはかとなく上品なご婦人。「鍵盤は上がってこないし、音が全然でない所もあるし、何だか申し訳ないようなじょうたいなんです・・・」。父がお友達から譲り受けて、姉のもとにあったのですが、亡くなったため私が受け継いだわけでして…私はぴあのが弾けないんですけど、せっかくのドイツ製のピアノですので、これから少し触ってみようかと・・・
なんとこれが72Keyなんです。「HORUGEL」1893・in Leipsig Germany 製造年は1952~1955あたり。私どもが2012年に発売した「Q☆PIANO」は73Key。縦・横のサイズもほとんど変わらず、一般の人が見たら相当小さいとじるところでしょうが、私にはまったく違和感はなく、むしろ懐かしいというかなんでこんなところでお目にかかれたのか?という印象。
弾いて?みると、確かに音出ない。鍵盤もいくつも上がってこない。もちろん音律もばらばらというか音程がない。「ハー・・・・・・・・・」「ウウウーム」即座に応えられない。とにかく内部の検証をさせてください・・・というと、ちょっとさみしそうに「はい」と小声でお返事され、隣室に移られました。とにかくパネルをはずし、アクションを外し鍵盤の状態などもチェックし・・・・相当重症。高音がほとんど発音してないので、打弦点をほんの少し下げてみると・・・・出ました音が。鍵盤は簡単にスティックを直す。ダンパーレバーの戻りも悪い。スプリングがへたっているようなので、これは交換しかないな。チュウニングピンも緩い。・・・と。これ全部作業すると、オーバーホールになって費用は40~50万も掛かっちまうかも。いやいやそれより、オーバーホールみたいな大手術に耐えられないかも。で、どおする?
奥様をお呼びして、状況を説明。とてもご不安そうなお顔。これからの使用目的をお伺いする。「私が細々と弾ければいいんですけど・・・」というお応えでしたので、「大がかりな部品交換などは原則行わず先ずは修理と調整・調律で何とか復活させましょう。費用も10万位で・・・」という提案。ほっとしたような表情をされて、お任せいただくことになりました。(本心、えれえことになった。損得ぬきだな!)
しかしながら、60年の時を超えて図らずも同じ大きさの同じコンセプトのミニピアノにであったことは偶然とも思われず、神のお導きであることと大いに感じアクションをおあずかりして帰路についたわけです。何とか10日ほどで復活させたいと思っております。状況は後日ご報告!